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これは無差別の大規模テロ行為であり、民間人や非軍事目標を攻撃した国際人道法(戦時国際法)違反の非道な戦闘行為である。いかなる理由があれ、到底容認できない。
パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスが、イスラエルを大規模攻撃した。イスラエルも空爆などで応酬し、激しい戦闘が続いている。双方の死者数は膨れ上がるばかりだ。
ハマスは数千発のロケット弾攻撃に加えイスラエル領内に侵入し、多数の民間人を殺害し人質として拉致した。ハマスは即刻軍事行動を中止し、人質を解放しなければならない。
米英独仏伊の首脳はイスラエルへの「揺るぎない結束した支持」を表明した。対照的にイランのライシ大統領は、ハマスのイスラエル攻撃を「英雄的だ」と称賛した。
イランはハマスやイスラム過激派組織ヒズボラに強い影響力を持つ。イランやヒズボラが戦闘に主体的に関与すれば、混迷は一気に深まる。日本や国連、関係各国はハマス、イスラエル双方に自制を求め、仲介に全力を尽くしてほしい。
戦火の拡大はなんとしても防がなくてはならない。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスは、これまでも「宿敵」のイスラエルと軍事衝突を重ねてきた。しかし、今回のような大規模な越境攻撃は前例がない。
中東では近年、地域の武装勢力を支援して影響力増大をはかるイランをアラブ各国が警戒する状況が続いてきた。イスラエルとアラブ諸国の対立が相対的に弱まる中、アラブの盟主サウジアラビアとイスラエルは、米国の仲介で国交正常化交渉を進めていた。ハマス側はこうした動きに「パレスチナ問題が置き去りにされる」ことへの不満と危機感を強めていた。
今年はイスラエルとパレスチナの2国家共存を目指した「オスロ合意」から30年という節目の年だが、イスラエルの強硬姿勢などにより交渉は頓挫したままだ。だからといって、多くの人命を奪う攻撃が正当化されるわけはない。
「2国家共存」を支持するバイデン大統領は今こそ「中東の仲介者」としての役割を発揮してほしい。イスラエルやアラブ諸国と良好な関係を持つ日本にも大きな役割があるはずだ。
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2023年10月11日付産経新聞【主張】を転載しています